
芦生の森の入り口にそびえ立つ大きなブナ。
「ブナ1本 ブリ1000匹」
という言葉があるそうだ。
根元の土壌から豊かな栄養が海に流れ、たくさんの魚を育むブナの森は”母なる森”と呼ばれる。
ガイドさんの生命の授業を聴きながら、
フワフワの土を踏み締め、
濃い霧に包まれた幻想的な森を奥へと進む。
雨
どっさり、雨
杉の葉先にぶら下がる鈴のような丸い水玉
イキイキと輝く苔
大ジャンプで横切るヒキガエル

雨は嫌だ
という感覚を、最近手放していたことに気付く。
樹齢1000年の大杉。
元株の上に落ちた別の種が育ち、その根は地面まで伸びている。高さ40メートルの樹は色んな植物を飲み込みながら成長を続けている。
雷が落ち
空洞になっても生き続けている樹。
折れて尚、他の植物を育んでいる樹。
目の前の
芽吹いたばかりのこの杉は、
一体これから何年生きるのだろうか。
この若い杉を私の子孫が見上げる頃
地球はどうなっているのだろうか。

ほんの束の間、ここに生かされている私。
できることを探す前に、ちっぽけ過ぎる日々の悩みを捨てよう。
森を出ようとしたとき、雄鹿の声を聞いた。
『奥山に もみじ踏みわけ 鳴く鹿の 声きくときぞ 秋は悲しき』
物哀しいその声を聞いて、我が家に帰りたくなった。

夫が突然「いってきます」と言うようになった。
家族に挨拶の習慣がなかったらしい夫は、朝黙って家を出て行き、「おかえり」と言っても無言だった。これまで「寂しい」と言っても頑なに無言を貫いていたのに。
先日、息子の「ただいま」を聞いて驚いていたので「せっかく家族なんだから、あなたも気持ちよく挨拶しようよ」と言ったときも無言だったのに。
やっぱり、こんな小さなことが嬉しくて
ちっぽけな自分に苦笑しながら、
今朝も、夫が何故かぶっきらぼうに大声で言う「いってきます」に、倍返しの音量で「いってらっしゃい」を言う。
人生は、面白い。
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