〜私が世界を変えていく

  1. エッセイ

富士登山は突然に 〜いよいよ本番②

登山口で「ゆっくり急いで!」という

受け取り難いエールと共に、富士登山へのチャレンジが始まった。

↓前回のストーリーは、こちら
https://talkativemako.agreable.space/?p=6721↗

普段大した運動もしていない、半世紀を生きた主婦にとっては

決死のチャレンジと言っても過言ではない。

私は大学生の頃まで、とても緊張しやすく

試合前や定期テストの前でさえも、お腹をくだすほどだった。

が、何故か

いざ本番が始まれば、周りが拍子抜けするくらいすっかり落ち着いてしまう。

歳を重ね、3人の子供を産み育て、
いつの間にか、本番前でもあまり緊張することはなくなっていたが

富士登山は久々に余裕がなくなるくらいの緊張感(不安)を覚えた。

”明日のこの時間には、下山して温泉に入って、帰路に着こうとしているのだ。だから大丈夫”

という、楽しみ感ゼロな思考で平静を保ち、とにかくプロ(ガイドさん)のアドバイスには全部従って登ることにする。
とにかく、高山病だけは避けたい。

ポイント

1、ゆっくり、小さな歩幅で、一定のペースで登る

2、呼吸は強く吐くことを意識する
  腕を伸ばした先に立てた蝋燭を消すイメージで
  (渾身の力で吐く)

3、こまめに水分を摂る

ペースを保ちやすい、ガイドさんのすぐ後ろが一番ラクに登れるのだそうだ。

それほどまでに、一定のペースを保つことが大切なのだと心に刻む。

一番しんどいという最後尾は、長女が担うこととなった。

実は、富士山は土砂崩れによって形を変え続けていて

なんと、1年に10tトラック30,000台分もの土砂が、毎年運び出されている。

確かに山肌は脆く、簡単に崩れてしまいそうだ。

富士山の裾野が広いのは、その火山噴出物が流れやすいという特徴を持つからだそうだ。

「いつか、富士山は姿を消してしまうかもしれない」

というガイドさんの本気とも冗談ともつかない言葉に、

永遠に変わらないものなど、この世にひとつもないのだなと思った。

出発が遅れたおかげでいいことがあった。

出発してまもなく、パラパラと小雨が降り

二重にかかる虹と、影富士を眼下に望むことができた。

ガイドさん曰く、非常に珍しいことなのだそう。

さて。。。

六合目に到着する頃には、荷物が吹き飛ばされるほどの強風となった。

ガイドさんが「今日は最悪のコンディション。これが登れたら他のどんな山も怖くないですよ。」

と励まして?くれたように、

真っ暗な岩場を手づかみで登る頃には

時折

飛ばされて落ちてしまうのではないかと思うほどの突風が吹き

小さな悲鳴が何度も上がった。

同行した30代の女性は恐怖に慄いていたが、

私は、ガイドさんが大丈夫と言うのだから大丈夫なのだろうと

ただひたすら、ゆっくり進む・強く吐く・こまめに水分と栄養補給、を意識しながら登り続けた。

息苦しさは辛かったが、体力的にはさほど参ることはなく、

ようやく八合目の山小屋に到着した頃には夜の10時を過ぎていた。

登山開始から5時間、まずは初日の行程を無事終えて、ホッと胸を撫で下ろす。

軽い高山病の症状か気分が悪く、私は夕飯には手をつけなかった。

元気いっぱいに「わーい」と、いなり寿司を一口食べた先程の女性は

その後、急に気分が悪くなり嘔吐し続けてしまった。

水分をほとんど摂らずに登っていて、気が付かないうちに高山病にかかっていたようだ。

さらに、山小屋に着いたらもう安心とはいかず

横になると息が浅くなってしまうため、すぐに寝るとまた高山病のリスクが高まるとのこと。

3時間後には起きて出発とのことだったが、

横にはならず、座って深く呼吸をしながら瞑想をすることにした。

カーテンで仕切られた雑魚寝スタイルの山小屋は、大きな2段ベッドのようになっていて

上下合わせて20人くらいが寝ているようだったが、とても静かだった。

ダウンジャケットとダウンパンツを着込み

毛布と寝袋に深く潜り込んでも寒い。

ほんの6時間ほど前までいた地上のうだるような暑さとはまさに別世界だ。

寒さと興奮で、ずっと浅く目覚めていたような感覚のまま

起床時間の1時を迎えた。

消灯前の予報では、更に風が強くなるとのことで
「頂上アタックは、中止するかもしれない」
とガイドさんから言われていた。

私は、ここまでにもう十分の体験をさせてもらったので

頂上まで行けるかどうかは、どちらでもいいと思っていた。

→続き https://talkativemako.agreable.space/?p=6739↗

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